研究概要 |
本年度は,(1)V.vulnificusにおけるSignature Tag標識トランスポゾン挿入変異法の確立,および(2)この系を用いたV.vulnificus OPU1株の感染に関わる遺伝子群のスクリーニング,を2点に絞って研究を行った.その結果,鉄剤投与で感受性化したマウスへ腹腔投与した変異株プール(INPUT)を投与し,一晩後にマウス心臓血中から変異菌株プール(OUTPUT)を得た.INPUT, OUTPUTの変異株プールを,それぞれ,Signature TAGについてDIGでラベルしたプライマーを用いてPCR増幅し,検出プローブとした.次に,OUTPUTの各変異株のSignature TAGを貼り付けたメンブランに対して,ドットブロット法で,それぞれにプローブで検出を行ったところ,INPUT-TAGプローブでは検出されているが,OUTPUT-TAGプローブでは検出されない変異株(0204株)を得た.この0204株は鉄剤前投与感受性マウスを斃死させず,感染を疑わせる症状も起さない弱毒化株であることが判明した. この変異株のTn挿入領域の塩基配列を決定したところ,(1)V.vulnificus CMCP6株染色体DNA(2)V.cholerae O抗原合成遺伝子と相同性が認められた.また,弱毒化変異株加熱死菌は野生株に対するO凝集抗体に反応を示さなかった.これらにことは,O204株はO抗原遺伝子群の一部が破壊され,O抗原に変異を起していることが示唆された.従って,O抗原がこの感染性に重要な役割を果たしていることを示唆している.
|