研究概要 |
結核菌の細胞表層には多彩な糖脂質が存在する。これらの糖脂質は結核菌の病原性の発現に寄与している。代表的な糖脂質として、抗酸菌に特有の超高級脂肪酸であるミコール酸を含むtrehalose dimycolate(TDM)や両親媒性物質のlipoarabinomannan(LAM)、その脂質部分のphosphatidylinositol mannoside(PIM)などが存在する。PIMにはTLCでRf値が異なる少なくとも2種類のPIM-1,PIM-2が存在する。MALDI TOF-MASSを用いて解析したところ、PI1M-1はアシル基が4分子、PIM-2はアシル基が3分子からなるphosphatidylinositol dimannosideであった。 TDM、LAMおよびPIMをw/o/wエマルジョンとしてマウス尾静脈に投与するとTNF-α依存的に肺に肉芽種を形成した。肉芽種形成能は、TDMが最も強く典型的な肉芽種を形成した。LAMおよびPIMによる肉芽種形成は、一過性であった。LAMおよびPIMを経気道投与し、4時間および8時間後の肺胞洗浄液中の細胞を解析したところ、LAMおよびP1M投与により好中球の浸潤が認められた。LAM投与により強い炎症反応が認められた。 LAMおよびPIMのマクロファージ活性化能を肺胞マクロファージおよび腹腔マクロファージを用いて、TNF-α誘発活性を指標として比較したところ、LAMが強いTNF-α誘発活性を示した。LAMおよびPIMによるマクロファージ活性化のシグナルがどのTLRを介して起きるかを検討するため、各TLRのトランスフェクタントを用いてNF-κB依存的ルシフェラーゼアッセイを行った。LAMおよびPIMは、CD14依存的にTLR2を介してシグナル伝達することが明らかとなった。構造が異なるPIM-1およびPIM-2の生物活性はほぼ同等であり、アシル基の数は生物活性にあまり影響がないことが明らかとなった。現在、LAMおよびPIMに特異的な単クローン抗体を作製しており、さらにTLCでRf値が異なるより親水性であるPIMを単離・精製中である>これらを用いてPIMの構造と生物活性の比較を行う予定である。
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