研究課題/領域番号 |
14570244
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研究機関 | 杏林大学 |
研究代表者 |
神谷 茂 杏林大学, 医学部, 教授 (10177587)
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研究分担者 |
花輪 智子 杏林大学, 医学部, 助手 (80255405)
大崎 敬子 杏林大学, 医学部, 助手 (90255406)
田口 晴彦 杏林大学, 医学部, 講師 (20146541)
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キーワード | ヘリコバクター・ピロリ / クオラムセンシング / 変異株 / オートインデューサー |
研究概要 |
クオラムセンシングquorum sensing(QS)は細菌が自らの密度に対応して産生するオートインデューサーautoinducer(AI)により、細菌の種々の遺伝子が調整される現象である。H.pyloriが産生するAI-2については既に報告(Forsyth & Cover,2000;Joyce et al.,2000)があるが、病原因子にどのように作用しているかは明らかにされていない。QSのH.pylori感染における役割を明らかにするために、AI-2産生を制御する遺伝子luxSの不活化変異株を作成し、変異株の耐酸性、付着活性、運動性などを野生株のそれらと比較するとともに、スナネズミへの感染性についても検討を加えた。 luxS変異株の作製は、Ogura&Berg(米国、ワシントン大学)により分与されたTN2(luxS::cat)の染色体1.7kbを鋳型にしてPCR法により増幅したDNA断片をH.pyloriTK1402株にNatural transformationすることにより行った。得られた変異株をHPKY06と命名した。Vibrio harveyiBB170株を用いたluminescence bioassayによりAI-2の産生量を測定した結果、HP06株のAI-2活性は野生株の100分の1以下であった。 野生株または変異株10^9CFUをスナネズミに2日間連日投与した。感染後経時的に屠殺し、胃内菌数の測定、病理組織学的観察を行った。変異株投与後1週でスナネズミ4匹中1匹にRT-PCR法により、H. pyloriが検出され、1ヶ月で5匹全例が陰性、3ヶ月で2例が陽性であった。これに対し、野生株は1週、1ヶ月、3ヶ月後ともにRT-PCR法では全例、培養法では1ヶ月で4例、3ヶ月で3例10^<2-4>個/胃粘膜程度の菌数で検出された。病理組織学的検査では、野生株感染1ヶ月後のスナネズミ胃粘膜固有層に強い炎症性細胞浸潤が認められたが、変異株を感染させた群ではこのような変化は認められなかった。pH3での耐酸性は尿素存在下において両株間で同等であり、胃上皮細胞への付着性も両株間で差異を認めなかった。しかし、0.3%寒天培地上で変異株は野生株と比較して運動性が低下していた。これらの結果からQSは運動性に関わる遺伝子の発現に関与し、初感染に重要なファクターとなっている可能性が示された。
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