日和見感染の主要起因菌である緑膿菌は高度多剤耐性を有するので、治療が難しく大きな問題となっている。本菌の多剤耐性は薬剤排出率が原因し、これまでに7種類のRNDファミリー型薬剤排出ポンプが緑膿菌で見出されている。これらは3種類の成分からなるが、緑膿菌で構成的に発現しているのはMexAB-OprMポンプだけである。薬剤排出にはどの成分も不可欠であるが、これらサブユニットがどの様な形の複合体をつくっているかは不明であり、四次構造の解明はポンプ機能の分子メカニズムを明らかにする上で必須である。そのためにサブユニット間相互作用をin vitro系で調べる方法を適用した。二つのサブユニットにおいて、一方のタンパクにヒスチジンタグを付加し、それをNi NTA樹脂にアプライすると、タンパクはヒスタグを介してNiカラムに吸着される。そこへもう一方のタンパクをカラムにかけた時もしタンパク間相互作用があれば、このタンパクはカラムに吸着される。この方法を用いて(1)MexAとOprMとの相互作用(2)MexAとMexBとの相互作用(3)MexBとOprMとの相互作用を調べた。その結果、これらサブユニット間で全て特異的に相互作用することが明らかとなった。これらの結果から内膜にあるMexBは外膜にあるOprMと直接相互作用し、内膜と外膜をまたぐ薬剤輸送経路を形成することが考えられた。またMexAは相互作用を介してポンプ構造を安定化する。 しかしポンプサブユニット間相互作用の阻害剤をスクリーニングするにはこの方法は適さない。そこで簡便な方法として蛍光吸光エネルギー転移(FRET)法を用いた。MexAおよびOprMの特定部位をCysで置換し、それぞれドナーおよびアクセプター蛍光物質で修飾する。両者タンパクを混合した時、相互作用するのでFRETが起こる。これに相互作用を阻害する物質を添加すればFRETが解消されるはずである。現在蛍光物質標識したMexAおよびOprMタンパクの調製を行っている。その後FRET測定を行う予定である。
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