研究概要 |
我々は1998年に新生児TSS様発疹症(NTED)と呼ばれる新しい感染症を見いだした。このNTEDはメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)が産生するスーパー抗原性外毒素TSST-1による感染症であり、患児が未熟児の場合は重症化する傾向にある。NTEDにおいて活性化するT細胞はTCRVβ2陽性細胞のみなので直接作用するスーパー抗原はTSST-1であると考えられるが、近年MRSAの染色体の前塩基配列が決定され、MRSAはTSST-1以外にも様々なスーパー抗原様毒素を産生していることがわかってきた。従って、それらの毒素がサイトカイン産生を誘導する事により、間接的に或いはTSST-1と同じTCRVβ2陽性細胞を活性化することにより症状を増悪している可能性がある。これらの毒素の機能解析は、NTEDの治療及び予防法を考える上で重要であると思われる。 1)NTED患児、健康MRSA保菌児から分離したMRSAのTSST-1産生について調べたところすべてのMRSAはTSST-1を産生していた。ほとんどのMRSAはTSST-1とは別にSET6-15を保有している。この内、set6,7,9,11,15をクローニングしてその遺伝子産物のサイトカイン誘導能及びリンパ球の幼若化活性を調べたところ何れもTSST-1に比べて劣っていた。以前報告したSET6の弱い活性もその後の詳細な検索により活性がないことが分った。 2)近年米国において致死性の高いMRSA強毒株が発見されその全塩基配列が決定された。set遺伝子も新たに16から26まで発見され、それぞれset6-15と高い相同性を有している。set16,22をクローニングし、その遺伝子産物の機能解析を行ったところいずれもリンパ球に対する活性はなかった。従ってSETは、NTEDの発症とは直接関わってないと思われる。
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