研究概要 |
我々はエンドトキシン誘発一酸化窒素(NO)産生に及ぼす活性化プロテインCの影響を検討した。マウスマクロファージ細胞株RAW264.7及び血管内皮細胞株END-DをLPS単独、あるいはガンマインターフェロン添加で培養し、NOの産生を誘導した。LPSは、大腸菌055由来のものを使用した。以下のような実験結果を得た。 (1)AW264.7細胞をエンドトキシンと共に培養すると、著明なNO産生が誘導されたが、活性化プロテインCを添加すると明らかにNO産生を抑制した。 (2)END-D細胞をガンマインターフェロンと共にLPSで刺激すると、NO産生が誘導されたが、活性化プロテインCの添加はこれを抑制した。 (3)この抑制は添加された活性化プロテインCの濃度に依存し、20μg/ml以上の濃度で抑制効果を示した。 (4)活性化プロテインC抑制効果は、END-D血管内皮細胞よりRAWマクロファージ細胞株の方が強かった。 (5)活性化プロテインCの抑制効果は、添加後1日目より2日目の方が著明であった。 (6)誘導型NO合成酵素(iNOS)の発現が活性化プロテインC添加により抑制された。 (7)活性化プロテインCは、腫瘍壊死因子(TNF)の産生も抑制した。 (8)活性化プロテインCは、NF-kappaBの活性化を抑制したが、p38、ERK1/2,JNKなどのMAPキナーゼの活性化は抑制しなかった。 (9)活性化プロテインCに細胞毒性はなかった。 今回、血液凝固に重要な役割を果たしている活性化プロテインCは、マクロファージや血管内皮細胞株でエンドトキシン誘発NO産生や誘導型NO合成酵素の発現を抑制した。さらにこのメカニズムとして、細胞内シグナルであるNF-kappaBの活性化を阻害することによると考えられた。また、細胞毒性もないため、活性化プロテインCがエンドトキシン誘発炎症性メディエーターの誘導を抑え、エンドトキシンショックの治療への応用の可能性が示唆された。
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