研究概要 |
回帰熱流行地アフリカ中部タンザニアのドドマ近郊に分布生息するダニを採集、ミトコンドリア遺伝子塩基配列を解析、媒介節足動物の同定と生態調査、ダニ保有ボレリアの検出と種同定、感染対称である小児の感染率を明らかにした。 1 ドドマ近郊Mvumi mission villageで採集したダニ186個体について調べ、この地域に分布、回帰熱媒介ダニはすべてOrnithodoros porcinusであり、6軒の民家から採集したダニはそれぞれ20〜70%と高率に回帰熱ボレリアを保有し、高い侵淫率であった。ついで媒介ダニ67個体について回帰熱ボレリア培養を行い、3株のボレリアを得たが、いずれも新種ボレリアではなくBorrelia duttoniiであった。 2 5歳以下の小児361名の血液について回帰熱ボレリアの検出を試みた。調査したもののうち採血時に発熱していた小児からの血液では6検体から(6/54)、健康な小児血液からも13検体から(13/307)回帰熱ボレリアが検出できた。 3 同地域の家屋から採取したダニからのボレリア分離率はPCRによるボレリア検出率に比較して著しく低く、培地による培養は困難であることが明らかである。現在このボレリアの菌体表層蛋白遺伝子などをコードする分節染色体をそれぞれ分取して、ゲノム解析を行っている。 4 新種ボレリアは鞭毛遺伝子と16R rDNA塩基配列による系統解析を行った結果、旧世界回帰熱ボレリアでなく、北米大陸に分布する新世界ボレリアに近縁であることが明らかになった。 5 回帰熱ボレリアの抗原蛋白である菌体表層蛋白遺伝子をクローニングして、それぞれのGST融合蛋白質を大量発現、精製して3次元構造解析を行っている。現在4つのサブファミリーからひとつずつvspE, vlpE, vlpP, vlpXの立体構造を解析中である。
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