川崎病患児咽頭由来緑色レンサ球菌(SS4株)のコロニーセレクションと培養培地の検討を行った結果、従来になく増殖が良好な株が得られた。これを用い、さらに培地を検討した結果、ペプトンにプロテオースペプトンを用いた透析培地がもっとも増殖がよく、最終菌濃度1.8(660nmOD)を得た。これを用い、約50Lの大量培養を試み、その上清から約1.5gの粗毒素タンパク質を得た。リンパ球芽球化活性は従来になく低値であったが、培養と濃縮のスケールアップに伴う活性の変性や新たに混在する活性阻害物質の存在を疑った。特に、タンパク分解酵素活性の増加がもっとも可能性が高いため、積極的なタンパク分解酵素阻害剤(以下阻害剤)の導入を試みた。その結果、粗毒素段階におけるタンパクプロフィール(SDS-PAGE)に顕著な違いは認められなかったが、次の精製過程であるDEAEセファセルカラムの塩基性分画(未吸着毒素活性分画)において明らかな差が認められた。阻害剤存在下でのDEAE分画には分子量60-50KDのタンパクが認められるのに比べ阻害剤を加えずに行ったものにはほとんど確認できず、新たに約30KDの低分子タンパクが確認された。また、この分画の陽イオン交換HPLC分析においても、活性溶出位置の変化が認められ、阻害剤存在下ではより塩基性にシフトすることが認められた。しかし、実験濃度の阻害剤存在下では芽球化活性も同時に押さえられた。今後、阻害剤効果の主体を特定することと、タンパク分解阻害と活性抑制のバランスをとった実験系を構築し実験目的を達成するつもりである。
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