川崎病患児咽頭由来緑色レンサ球菌SS4株は、最適な培養条件および酸素訓化により増殖菌量が倍加したが、それに伴ってリンパ芽球化活性の低下が著しくなった。コロニーセレクションによる100株以上のクローニングによっても活性の産生回復は認められなかった。ここでは、川崎病患児由来の保存臨床分離菌16株について、SS4株で得られた培養培地と厳密な嫌気状態で改めて芽球化因子の検索を行った。その結果、半数以上の9株に明瞭な芽球化活性を認めたが、いずれも一晩培養では活性は検出されず38時間以上の培養継続で活性が検出されることが判明した。また、9株中6株の培養上清からは数回の活性測定でも同様の反応が得られているが、3株についてはリンパの採取個体によって活性に大きな差が認められた。このことから、菌株により異なる芽球化因子の産生が予想され検討中である。SS4株における結果から、本芽球化因子の分子量が約10KDaであることから、分画分子量5KDaの限外濾過膜濃縮と75%飽和硫安による塩析法を粗毒素の濃縮に併用したが、塩析による芽球化活性濃縮効果が培養上清由来菌株によって異なることが観察され、ここからも芽球化因子の多様性が推測された。ここで、9株中もっとも高活性が認められた2株、常に高い活性を示したK-9株と、由来個体リンパ種により変動が大きいR2-6株を取り上げ、濃縮した培養上清のゲル濾過クロマトグラフィーを行い、リンパ球芽球化因子の分子量の見積もりを行った。ゲル濾過カラムは、バイオラッドのSEC250を用いHPLCによる高精度分画を行った。その結果、K-9株からは分画分子量約290KDaとこれまでになく高分子量領域に高い活性が認められたほか、SS4株同様10KDaにも活性が認められ明らかに2種の活性分画が認められた。R2-6株については高分子量領域には活性が認められず分子量約10KDaに活性のほとんどが集中し、この2菌株の産生する芽球化因子の差異が認めらた。活性の精製、単離には至らなかったが本菌種の芽球化因子産生に培養条件の調整が重要であることが判った。また、複数種の芽球化因子が推測される。
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