緑色レンサ球菌(VGS)は急性期の川崎病患者の咽頭からしばしば優位に検出される。これらの菌種がリンパ球芽球化因子を生産している場合、川崎病の病因と関連してスーパー抗原仮説を考え、起因菌種の候補になりうると考える。ここでは、8人の急性期川崎病患者のうち4人の患者から分離された4株、SS4、M15、K-9、およびR【encircled 2】-6各株における芽球化因子の産生について報告する。API Strep20と他のいくつかの試験結果から、SS4とM15株はS.mitis、K-9とR【encircled 2】-6株はS.sanguisと同定された。芽球化活性の検出には、ウサギまたは人の末梢血リンパ球の培養を用いた。これらの芽球化因子産生株をトリプシン消化ペプトン(ミクニ毒素用ペプトン)-酵母エキス透析培地で培養を行い、得られた上清はDiaflo YM10またはYM05限外ろ過膜により濃縮し、75%飽和硫酸アンモニウムで沈殿させた後ゲルろ過およびイオン交換高速液体クロマトグラフィーによって精製した。培養上清中の芽球化活性は分子量約10から17kDaの範囲に見いだされた。また、この芽球化因子は陰イオン交換ゲル(DEAEなど)に吸着しなかったことから塩基性のたんぱく質であると思われる。しかし、この活性は不安定で精製の過程が進むに連れ低下した。混在するプロテアーゼの可能性から、プロテアーゼ抑制剤を使った実験を行ったが活性の低下には効果がなかった。これらの結果は川崎病の病因学上の困難を示唆すると考える。緑色レンサ球菌の産生する芽球化因子のよりいっそうの精製および性状の解明は、これらのスーパー抗原性、または川崎病の病因であるかに限らず重要であると思われる。
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