エンドトキシン作用の種特異性の問題は、エンドトキシン疾患の治療法の開発、活性の生体利用、汚染エンドトキシンによる医薬品等評価において非常に重要な問題である。我々は代表的な細菌であるサルモネラのリピドAがヒトには不活性で、マウスには強力な活性示すという動物種特異性を示すことを見いだしているが、本研究ではエンドトキシンの動物種特異的反応の分子機構を解析した。その結果、サルモネラ由来リピドAはヒトマクロファージにマウス由来のTLR4とMD-2を発現させることにより、活性が現れること、特にこの際のマウスのTLR4をヒト由来のものに置換してもサルモネラリピドAの反応が50%程度残るものの、MD-2をヒト由来のものに置換するとこの反応性は大きく減弱することから、MD-2がこの種特異的反応の主因であることを明らかにした。さらに、この種特異的反応には、従来エンドトキシンの活性には寄与していないとされてきた糖鎖部分が重要な役割を果たしていることを見出した。すなわち、THP-1細胞およびヒトのCD14/TLR4/MD-2を発現させた293細胞では、大腸菌の場合と異なり、サルモネラLPSから多糖部分を除いたリピドAは活性が1000倍以上低下した。一方、RAW264細胞およびマウスCD14/TLR4/MD-2を発現させた293細胞では、大腸菌のLPS、リピドA、およびサルモネラLPSがほぼ同等の活性を示し、サルモネラリピドAもこれらと同様の強い活性を示した。また、サルモネラのRe変異株由来のLPSはTHP-1細胞、および、ヒトまたはマウスのCD14/TLR4/MD-2を発現させた293細胞のいずれにおいても強い活性を示したが、そのリピドAはほとんど活性を示さなかった。大腸菌型およびサルモネラ型の化学合成リピドA(506、516)でも天然由来のリピドAと同様の結果が得られた。以上より、サルモネラのLPSでは、ヒトのTLR4を介するNF-κBの活性化に糖鎖部分が不可欠であることを明らかにした。一方、エンドトキシンの種特異的反応にはCD14は寄与しないとされてきたが、ヒトとマウスのCD14ではLPSのシグナル伝達においてC末側の要求性という点で異なっていること、さらに、TLR4/MD-2またはTLR2を介するNF-κBの活性化には、マウスCD14の異なる領域が必要であり、35-44、15-153、235-243および273-275のアミノ酸がLPSとの結合およびTLR4/MD-2へのLPSの受け渡しに重要な役割を果たしていることを明らかにした。これらの結果から、CD14、TLR4、MD-2といった分子全てが、糖鎖部分も含めたエンドトキシンの構造認識に関与し、これを識別する複雑な機構が生体に存在することが示唆される。
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