研究概要 |
最近の疫学的調査により我々は成人の急性下痢症の15%がロタウイルスによるものであることを明らかにした。しかし,成人集団でcirculateしているロタウイルスがどのようなウイルスであるか,また,乳幼児の間でcirculateしているロタウイルスとどのような関連があるのかは全くわかっていない。しかも成人からロタウィルスが検出されるピークは冬季に限らない。そこで本研究では,同一地域で,小児および成人の下痢症例からロタウイルスを収集し、分離培養を行い,これらを分子レベルで解析するとともに中和試験により血清型を解明する。この結果に基づき,成人集団でのロタウイルスのウイルス学的性状を明らかにした上で,乳幼児ロタウイルスとの関連性を解明することを目的とした。平成14年度においては,1999年12月から2000年3月の4ヶ月間にわたり,84例成人急性下痢症から予備的に収集した17例のロタウイルス陽性便検体について,ウィルス学的性状解析を行った。すなわち,成人ロタウイルス17例のすべてについて細胞培養でのウイルス分離を試みた。分離に成功した株についてはプラーク純化の後シードストックを作製した。分離株の中にG2やG9の株が多いことがわかった。とりわけ,G9のウイルスについては,近年世界各地の小児の間で突発的に出現してきているので,これらの新しいG9ロタウイルスとの関連についてさらに検討を進めている。
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