ヒトヘルペスウイルス(HHV)-6の潜伏感染・再活性化の機序に関する解析を行い、以下の結果を得た。 1.HHV-6の潜伏感染時に特異的に発現する遺伝子および蛋白を同定した。この遺伝子は、構造およびコードしている蛋白が、同じβ-ヘルペスウイルスに属するヒトサイトメガロウイルスと極めて似ており、両者の潜伏感染機構が類似である事を示唆した。 2.HHV-6は。中枢神経系へ移行し潜伏感染を成立させる。この中枢神経系への移行の機序を解明するために、HHV-6初感染時の血液中におけるウイルスキャリアーを検討した。この結果、HHV-6が、マクロファージによって組織に運ばれること、感染マクロファージにおいて、組織への移行に関係すると考えられる、ウイルス性ケモカイン受容体を発現していることが判明した。 3.HHV-6の潜伏感染特異的遺伝子の、発現動態とコードされる蛋白の機能を解析したところ、潜伏感染遺伝子の一部の発現と蛋白翻訳の亢進が、HHV-6の再活性化の起点となっている事が判明した。 4.また、HHV-6の潜伏感染において、3で述べた潜伏感染遺伝子の発現亢進状態は、比較的安定で、他のヘルペスウイルスの潜伏感染では知られていなかった、新しい相である事が判明した。この相の機能の一つは、再活性化への準備段階であると考えられ、ヘルペスウイルスの「自律的な再活性化を生じる」という性質にとって重要な機能であると考えられた。
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