プリオン感染では組織特異性が認められることから、組織特異性を規定するプリオン受容体が存在することが示唆される。我々は、プリオン蛋白(PrP^c)欠損マウスへの感染実験の結果、プリオン感染にはPrP^cが必要であることを明らかにした。この結果は、PrP^cが細胞膜表面に発現していることから、PrP^cがプリオン受容体の構成蛋白である可能性を示唆した。しかし、我々は、腎臓や心臓などの組織はPrP^cを高発現しているにも関わらず、プリオン感染性が認められないという奇妙な現象を発見した。つまり、組織特異性はPrP^c以外の未知の宿主蛋白が規定し、その分子はPrP^cと共にプリオン受容体を形成している可能性が考えられた。そこで・プリオン受容体を明らかにするために、三つの方法を用いてプリオン蛋白(PrP^c)結合分子を同定することにした。一つは、大腸菌にてリコンビナントPrPを精製しPrPのアフィニティーカラムを作製することによって、結合分子を同定することにした。今年度は、リコンビナントPrPを大量に精製することには成功したが、その後なかなか可溶化できずアフィニティーカラムの作製できないでいる。もう一つは、大腸菌でのtwo-hybrid法を用いて結合分子を同定することにした。今年度は、ベイトプラスミドの作製まで完了した。三つ目は、神経細胞にタグを付けたPrP^cを発現させ、共沈法を用いて結合蛋白を同定することにした。今年度は、タグを付けたPrP^cを発現する神経細胞のクローンを確立するのに成功した。
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