hPIV-1のシアリダーゼ活性をNeu5Ac2enに比べ数十倍強力に阻害する4-O-thiocarbamoylmethyl-Neu5Ac2enの新規合成法を開発した。この誘導体は、HN糖タンパク質のシアリダーゼ活性を阻害することで増殖したウィルスの放出を抑制するだけでなく、hPIV-1の受容体への結合も阻害することが判明した。また、HN糖タンパク質遺伝子を組み込んだプラスミドベクターを構築し、HN糖タンパク質を発現させた真核細胞系によるシアロ糖鎖受容体結合特異性試験法を確立した。現在、NDVのHN糖タンパク質の結晶構造から推定されるシアロ糖鎖受容体結合領域付近のアミノ酸配列をhPIV-1とhPIV-3間で比較し、部位特異的変異法により親株と異なる変異HN糖タンパク質遺伝子を組み込んだプラスミドベクター作製し、HN糖タンパク質の受容体結合特異性の解析を進めている。 さらに、糖鎖構造が判明している6種類のシアロ糖タンパク質とSV、hPIV-1、hPIV-3の反応性を固相結合法により比較した。その結果、SVはFetuinやα_2-Macroglobulioにも結合性を示したが、hPIV-1とhPIV-3は、これら糖タンパク質にほとんど結合性を示さず、ウシ赤血球膜シアロ糖タンパク質(GP-2)にのみ高い結合性を示すことが判明した。さらに糖鎖末端のシアル酸結合様式の異なる再シアリル化GP-2を作製し、シアロ糖鎖認識特異性をこれらウイルス間で比較解析した結果、hPIV-1とhPIV-3間では、シアロ糖タンパク質糖鎖末端のシアル酸結合様式に対する結合特異性が顕著に異なっていた。一方、4-O-thiocarbamoylmethyl-Neu5Ac2enよりも強力な阻害作用を示す新規シアル酸誘導体の開発をめざし、3種類の新規誘導体を合成した。この誘導体の阻害活性についてさらに解析を進めている。
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