研究概要 |
亜急性硬化性全脳炎(SSPE)患者脳より分離されたSSPEウイルスは,biased hypermutation(偏倚高頻度変異)と呼ばれるM遺伝子に偏在した特定の塩基置換(ゲノムセンスでadenine(A)からguanine(G)への変異)が高率に生じていることが判明している。近年adenosine deaminase that acts on RNA(ADAR)がその出現に関与していると推測されているが,麻疹ウイルス感染細胞内でM遺伝子がADARによりhypermutationを起こしうることを直接証明した報告はいまだない。そこで,我々は,本研究において,ADAR遺伝子強制発現細胞に麻疹ウイルスを感染させ,そのM遺伝子の変異を非導入細胞への感染と比較しながらbiased hypermutationを解析することを目的としている。 本年度においては以下のことをなし得た。 1.ADAR遺伝子の構成的発現細胞の樹立を昨年来試みているが,継代培養に伴い,発現の低下が著しい。細胞種を変えていくつか試みたうち,ヒトグリオーマ由来A172細胞ではその発現が比較的維持されている。現在その活性測定と限界希釈によるクローニングを行っている。同時に,麻疹ウイルス野生株による感染実験が可能なEBウイルスで不死化されたマーモセット由来Bリンパ球も安定発現細胞の候補となっている。 2.一次発現系を用いての変異誘導の解析系が確立され,スタートの準備が進んでいる。
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