研究概要 |
L^*蛋白はタイラーウイルスDA株でのみ合成される蛋白で、持続感染・脱髄に重要な蛋白と考えられている。しかし今まで、特異抗体がないこともあり、詳細な性状解析はされていなかった。我々は世界に先駆けて、L^*蛋白合成ペプチドを用いて、特異抗体を作製した(Virology289 : 95-102,2001)。この抗体を用いて、初めてin vivoにおいて、L^*蛋白の発現を確認できた。急性期において、L^*蛋白は脱髄感受性マウス(SJL/J)においても、脱髄非感受性マウス(C57BL/6)においても等しく発現しており、L^*蛋白の発現のみで脱髄発症が規定されないことが示された。さらに二重染色により、急性期におけるL^*蛋白発現の局在は他のカプシド蛋白と同様にニューロンに限局していることが示された(Journal of Virology76 : 13049-13054,2002)。 タイラーウイルスDA株の持続感染細胞は種々の報告から、monocyte/macropahge系の細胞と考えられている。もしそうであるならば、中枢神経のマクロファージとして知られているmicrogliaにおいて、持続感染するDA株と持続感染するGDVII株とではその増殖が異なるはずである。我々はmicroglia樹立細胞株であるRa2を用いて、持続感染するDA株のみが増殖し、持続感染に必要なウイルスゲノムの維持が可能であることを示した。またL^*蛋白非産生DAウイルスを用いて、このウイルス増殖にはL^*蛋白が重要な役割を果たしていることを示した(Neuroscience Letters327 : 41-44,2002)。
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