研究概要 |
タイラーウイルスはマウスに急性灰白脳脊髄炎を引き起こすGDVII亜群と持続感染・脱髄を起こすDA亜群に分類される。L^*蛋白はDA亜群でのみ合成される蛋白であり、持続感染・脱髄のキー蛋白の一つである。L^*蛋白非産生変異ウイルスDAL^*-1は、マクロファージにおいてウイルス持続感染に必須であるゲノムの維持(増殖)および宿主細胞死(アポトーシス)抑制ができないことから、L^*蛋白は持続感染に必須であると考えられている。昨年度、我々はL^*蛋白発現マクロファージ(J774-1)を作製し、L^*蛋白がJ774-1細胞におけるウイルスの増殖(ゲノムの維持)に必須であることを証明した(Virus Res 108:23-28,2005)。 今年度はL^*蛋白遺伝子を組み込んだレンチウイルスベクターをマクロファージに感染させ、L^*蛋白発現マクロファージ(P388D1)を作製した。DAL^*-1ウイルス感染により、コントロールのL^*蛋白非発現P388D1細胞では、DNAの断片化およびCaspase3の活性化が認められた。しかしL^*蛋白発現P388D1細胞においては、DAL^*-1ウイルスを感染させてもDNAの断片化もcaspase-3の活性化も認められなかった。すなわちL^*蛋白はタイラーウイルス感染によるマクロファージのアポトーシス誘導を抑制することが分かった(Microb Pathogenesis, in press, 2005)。マクロファージにおけるL^*蛋白のアポトーシス抑制はウイルスゲノム維持に有利に働き、DA株の持続感染に重要な役割を果たしていると考えられる。
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