研究概要 |
メモリーT細胞は特定の抗原を認識し、生体内に長期にわたり存在する細胞で、抗原の再感染時に早期に強力に増殖してその抗原を排除するものである。生体にメモリーT細胞を人為的に作製するためにワクチン接種がなされている。私は最近、正常SPFコロニーのマウスから過剰のメモリーT細胞を持つ突然変異B10#4を見つけた。この形質は常染色体劣性遺伝することが明らかになった。本研究によって、(1)B10#4マウスは過剰のメモリーT細胞を持つ以外に、以下の様な免疫学的な種々の異常が認められた。T, Bリンパ球初期発生障害(胸腺のCD4 CD8細胞及び骨髄の未熟B細胞の著減)、血小板増多、貧血、抗赤血球抗体および肝臓、脾臓へのリンパ球浸潤などの多彩な異常形質を持つことが明らかとなった。また、骨髄移植の実験から変異表現型は環境因子では無く、骨髄細胞自体に由来することが判明した。また、(2)SSLP法によって責任遺伝子が存在する遺伝子座を1cMの領域まで狭めることができた。また、その断片には約40遺伝子存在していた。その中の20遺伝子に関してコントロールとB10#4マウスの脾臓、骨髄を用いてRTPCRを行ったところ1つの遺伝子の発現が大きくコントロールとB10#4で異なっていた。バンドのサイズは同一だがスプライシング産物の量比が有為に異なっていた。この原因としてこの遺伝子内に変異が有りその影響でmRNAの発現される種類が異なることあるいはB10#4マウスの変異のために脾臓および骨髄に存在する細胞集団が異なってその影響でmRNAの発現される種類が異なることが考えられた。そのために、その遺伝子に関して染色体遺伝子の塩基配列を解析したところエクソン部には変異を認めることができなかったがイントロン部に2カ所変異を認めた。加えて、コントロールとB1O#4マウスの胸腺からDN3細胞をソーターで単離してその遺伝子のmRNAの発現をRTPCRで解析した。その遺伝子の発現はB10#4マウスで有為に高かった。
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