STAM1とSTAM2を胸腺特異的に遺伝子欠失させたマウスを作成したところ、Tリンパ球の減少が認められSTAMは生存に関わることが示唆された。このTリンパ球を用いて、IL-2シグナル伝達を解析した結果、MAP kinaseであるp38の活性化増進が認められた。MAP kinaseは細胞増殖、分化、細胞死、ストレス応答に深く関与する一連のカスケードからなるシグナル伝達系であり、大別して現在まで少なくとも3種の並行するシグナル伝達系が知られている。Positive selectionにおいてはMAP kinaseの一つであるERKファミリーが重要であることが示唆されている。一方でNegative selectionに関しては現在までp38系シグナル伝達の関与が示されている。p38はα、β、γ、δの4種のアイソフォームからなるセリン・スレオニンキナーゼであり、活性化には少なくともMkk3とMkk6の2分子が上流で関与することが知られている。p38は従前ストレス応答に関与することが知られ、紫外線や放射線により活性化され細胞死を誘導するほか、炎症性サイトカインの分泌に関与する。これらの点を踏まえて我々はMkk3とMkk6の遺伝子欠失マウスを用い、IL-2に対する反応を調べた。Mkk3ならびにMkk6遺伝子欠失マウス胸腺T細胞はIL-2刺激でほぼ同等に増殖したが、一方、IL-2を除去するとMkk6遺伝子欠失マウス胸腺T細胞はワイルドと同等にアポトーシスしたが、Mkk3遺伝子欠失マウス胸腺T細胞はアポトーシスに抵抗性を示した。このことはアポトーシスシグナル伝達にMkk3が関与する可能性を示唆している。従って、サイトカインに関わるアポトーシスにMkk3がどのように関連するかを解析中である。
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