研究概要 |
インターロイキン2(IL-2)は、T細胞増殖因子として同定されたサイトカインであり、免疫反応の拡大、維持に必須の役割を果たす。一般に自己免疫疾患ではIL-2作用を抑制することで疾病の改善が期待され、一方、IL-2遺伝子欠失マウスは炎症性腸疾患を発症し、免疫寛容の破綻よる免疫疾患の病態を呈する。これらの知見から、IL-2は免疫系を活性化するのみならず抑制する作用を合わせ持つことが示唆される。従って、IL-2シグナル伝達系の不全や異常な活性化は直接的に免疫寛容に影響を及ぼす。本研究ではこれら免疫疾患メカニズムの基礎理解の視点から、IL-2による細胞増殖ならびに増殖抑制の分子機構解析を行った。1)IL-2刺激のみならず、フォルボールエステルであるTPAに依存して増殖するTPA-Mat細胞を用いた、IL-2シグナル伝達分子のスクリーニング系が確立した。2)MT-1β細胞の細胞死はAICDによることが示唆された。3)Mkk3とMkk6の遺伝子欠失マウスを用い、IL-2に対する反応を調べた。Mkk3ならびにMkk6遺伝子欠失マウス胸腺T細胞はIL-2刺激でほぼ同等に増殖したが、一方、IL-2を除去するとMkk6遺伝子欠失マウス胸腺T細胞はワイルドと同等にアポトーシスしたが、Mkk3遺伝子欠失マウス胸腺T細胞はアポトーシスに抵抗性を示した。4)mkk3 mkk6ダブルノックアウトマウスは胎生11.5日(E11.5)で致死となり、致死直前の胎児において、心臓の形態異常、胎盤の菲薄化、卵黄嚢上の血管網の形成不全を認めた。特に胎盤のラビリンスレイヤーの菲薄化、および血管網の極端な低形成が顕著であった。TNFαによるp38のリン酸化は認められなかったが、UV刺激によ,るリン酸化は減少したが有意に検出された。
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