T細胞の機能を支える細胞膜のRaftの構造は細胞外の脂質濃度、特にコレステロール濃度に大きく影響されるものと考えられている。しかし、細胞外コレステロール濃度をどの程度変化させた時にRaftの構造変化が認められるようになるのかという基礎的な検討はなされていない。また、高コレステロール血症という細胞外環境のコレステロールが高い病態において、Raftがどのように変化し、この変化が個体の免疫系にどのように影響しているのかは全く不明である。高コレステロール血症が免疫機能に及ぼす影響に関して、この病態では全身的な免疫応答は抑制されるという報告があるが、この現象がRaftに関連しているのか、またこれがどのような分子機構で起こっているのかは不明である。本研究においては、高コレステロール血症によってRaftの構造と機能がどのように変化するかを解析した。高コレステロール血症患者(血清総コレステロール値:230mg/dl以上)T細胞を抗CD3抗体と抗CD28抗体にて刺激したところ、Raftの細胞表面発現の指標であるガングリオシドGM1の発現上昇は認められ、これは正常群と有意な差は認められなかった。従って、刺激特異的なGM1発現上昇という点においては、高コレステロール血症は細胞膜Raftに影響を与えないことが明らかとなった。今後、GM1以外のRaft構成脂質に変化がないのかを、特にコレステロールの細胞表面発現の変化に焦点を絞って解析を進めていく。また、発現したRaftの機能についても、Raft凝集刺激に伴うシグナル伝達反応を解析することによって検討していく予定である。
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