研究概要 |
Toll様受容体を介した刺激は樹状細胞を様々に活性化して、宿主の免疫能を活性化する。この生物活性の多様性はToll様受容体の細胞質内領域(TIRドメインと呼ばれる)と会合するアダプター分子の多様性に依存している。アダプター分子としては、これまでにTIRドメインを持つMyD88が知られており、すでにほとんどのToll様受容体シグナルに必須であることを明かにしてきた。MyD88に構造上類似したアダプター分子として、TIRAP, TRIF, TRAM, SARMの4種類が存在する。TIRAPはTLR2,TLR4シグナルに関与していることは、既に2002年に報告した(Nature,420:324-329,2002)。今回、TRIF, TRAMの遺伝子欠損マウスを作成、解析を行った。2本鎖RNA刺激によるTLR3シグナル、LPS刺激によるTLR4シグナルは、MyD88欠損樹状細胞に作用し、NF-κB, IRF-3を活性化し、インターフェロン(IFN)-β産生を誘導する。TRIF欠損マウスにおいては、TLR3,TLR4によるこれらの作用が障害されていた。一方、TRAM欠損マウスにおいては、TLR4シグナルだけが選択的に障害されていた。これらの結果から、TRIFは、TLR3,TLR4シグナルによるMyD88非依存性経路に、TRAMは、TLR4シグナルによるMyD88非依存性経路に必須であることが明かとなった。 以上の結果より、MyD88に構造上類似するアダプター分子TRIF, TRAMの生理的機能が明かとなった。
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