研究概要 |
自然免疫と獲得免疫を有効に機能させるために樹状細胞は必須である。樹状細胞上の一群の膜タンパクToll様受容体(TLR)は病原体成分を認識したのち、種々のサイトカイン、補助機能分子の発現を誘導するためのシグナル伝達機構を活性化する。本研究により、主として遺伝子欠損マウスを用いて、Toll様受容体の機能、シグナル伝達機構において下記のような重要な知見を明らかにした。 1.Toll様受容体のうち、TLR7の認識するリガンドは抗ウイルス薬、および、ウイルス由来の一本鎖RNAであった。また、TLR7リガンド刺激が樹状細胞サブセットによって異なる生物活性を発揮した。さらに、TLR9リガンドであるCpG DNAも、同様にサブセット依存性の生物効果を示した。 2.TLR4リガンドであるLPS(リポ多糖)は、インターフェロンβを介した経路によっても樹状細胞を活性化していた。このインターフェロンβの産生には、TLRに共通のアダプター分子MyD88ではなく、類似の構造を持つ新たな機能分子TRIF, TRAMが必須であった。また、TLR4シグナルは、MyD88を介して、樹状細胞のTh1細胞分化支持能を増強する一方、MyD88非依存性の経路でTh2細胞分化支持能を増強しうることが明かとなった。 3.2本鎖RNAはTLR3シグナルを活性化するが、そのシグナルはには、TRIFが必須であり、TRAM, MyD88は必須ではなかった。
|