我々は副腎皮質ホルモシ(グルココルチコイド; Gcs)の作用メカニズムを分子論的に明らかにする目的でGcsのレセプターであるグルココルチコイドレセプター(GR)会合分子の検索を行った。その結果新規RNA/DNAプライマーゼGANPに結合する分子として酵母ツーハイブリッド法にて我々がクローニングしたG5PRがGRと結合することが示唆された。G5PRはセリン・スレオニンフォスファターゼであるPP2AのサブユニットB"ファミリーと相同性があり、PP2AおよびG5PRはセリン・スレオニンフォスファターゼPP5との結合が示された(Kono et al.2002)。PP5がGRと複合体を形成することから、GRとG5PRとの結合をそれぞれのcDNAを共発現させたトランスフェクタントの系で調べた結果両者が複合体として共沈されることがわかった。さらにサル腎由来COS7細胞にGRとGRレスポンシブエレメント下流にルシフェレースを持つレポーター遺伝子を発現させ、Gcs処理によるGR活性上昇を測定する系においてG5PRの過剰発現はGRの活性化を抑制するという知見を得た。このことはG5PRがGRのnegative regulatorであることを示唆している。GRはその活性化にリン酸化を必要とする。我々はG5PRに会合するPP2AあるいはPP5フォスファターゼがこのリン酸化を阻害し、GRの細胞質から核内への移動およびその機能発現を抑制しているのではないかと考えている。現在G5PRによるGRの調節メカニズムを詳細に検討している。
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