抗炎症剤としてGlucocorticoid (Gcs)を投与された患者の骨髄では成熟B細胞のみならず、CD19^+CD10^+のB前駆細胞が減少していることを見い出した。健常人の骨髄あるいは臍帯血から単離したリンパ系前駆細胞をストローマ細胞上およびサイトカインを含む培養液にGcsを添加するとB系細胞の派生が障害され、NOD-SCIDマウスに同じ分画を移植してこのマウスにGcsを投与するとやはりB系細胞は再構築されないことから、リンパ系前駆細胞がGcsに感受性が高いと考えられた.RAG1の遺伝子座にGFP遺伝子を挿入し、RAG1の発現をGFPからの蛍光により生細胞で検出できるRAG1/GFPノックインマウスを作製し、米国オクラホマ州オクラホマ医学研究財団のPaul W.Kincade博士との共同研究により、我々はこれまでに全骨髄中にわずか0.00015%しか存在せず、リンパ球系にコミットメントが始まっていると考えられるLin^- c-kit^+ Sca-1^+ CD27^+ Flk-2^+ GFP^+分画を同定して、Early Lymphoid Progenitors (ELP)と命名した。RAG1/GFPマウスにGcsを投与すると速やかにELPは骨髄から消失した。またELPを含む分画をB系細胞を誘導する条件の培養系にいれても、Gcsが存在する場合Mac-1^+の骨髄球系細胞は出現するがCD19^+のB系細胞は現れない。興味深い事に抗アポトーシス分子であるBcl-2を強制発現させても倍養系ではリンパ系前駆細胞のGcsに対する感受性は影響を受けない。このことからGcsは分化したリンパ球系細胞に細胞死を誘導する以外に、リンパ球系前駆細胞にも作用して骨髄球系細胞分化には影響せず、リンパ球系細胞への分化を積極的に抑制している可能性が示唆された。この成果について論文にまとめ、現在投稿、審査中である。
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