研究概要 |
IL-27のシグナル伝達におけるJAK/STAT分子とその役割について調べた。組み換えIL-27を作製し、ナイーブCD4+T細胞を固相化抗CD3抗体で刺激1日後、IL-27で10分間再刺激し細胞溶解液を各種JAK1,2,TYK2,STAT1-6のチロシンリン酸化抗体を用いてウエスタンブロットによりIL-27刺激でリン酸化されるJAK/STAT分子について調べた。その結果、JAK1,-2,TYK2,STAT1,-3,-5とSTAT2のリン酸化が見られた。そこで、次にSTAT1のIL-27刺激による細胞増殖とT-betおよびIL-12Rβ2発現における役割を明らかにするため、STAT1遺伝子欠損マウスを用いて検討した。STAT1遺伝子欠損マウス由来ナイーブCD4+T細胞のIL-27刺激による細胞増殖は、野生型マウス由来のナイーブCD4+T細胞とほとんど変わらなかった。しかし、IL-27刺激によるT-betおよびIL-12Rβ2発現誘導や、IL-12と相乗的なIFN-γ産生もほとんど見られなかった。このSTAT1遺伝子欠損マウスでは、IL-27刺激によりSTAT1のチロシンリン酸化が見られないのみならず、STAT2,-5のチロシンリン酸化も見られなかったが、STAT3のチロシンリン酸化は野生型マウスと同様に見られた。以上より、IL-27のシグナル伝達において、STAT1は、T-betおよびIL-12Rβ2発現誘導に、STAT3は細胞増殖誘導に重要であることが示唆された。 さらに、IL-27を産生するマウス大腸癌細胞株Colon26のIL-27遺伝子導入株を作製しマウスに植えたところ、強い抗腫瘍効果および抗腫瘍免疫を誘導することが明らかになった。この機構として、IFN-γおよびCD8+T細胞が重要であることがわかった。
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