研究概要 |
血球系細胞に於けるネガティブレギュレーターとして重要なチロシンホスファターゼである、SHP-1の機能を解析するため、その基質を検索し、機能についての研究を行った。1)昨年度トリB細胞を用いて同定したSHP-1基質、アクチンのリン酸化・脱リン酸化の意義について、GFPアクチン融合蛋白を用いて解析した。BCR刺激後アクチン重合が起こるが、SHP-1機能欠損株(C>S)に於いてはアクチンのチロシンリン酸化は恒常的に上昇し、時間の経過と共に起こるアクチンの脱重合が阻害されていた。この結果はアクチンのリン酸化が重合に、また脱リン酸化が脱重合に重要であることを示唆している(J. Immunol, in press,2003)。現在アクチンのチロシンリン酸化サイトY>F変異体を作製し、3つのITIM様配列のうち、どの部位のリン酸化が生理的に重要であるか検討中である。2)SHP-1のB細胞に於ける基質として数年前に同定したCD72の機能に付いて、ふたつのITIM変異体を、CD72ホモログを欠損させたトリB細胞に導入し、解析した。その結果、SHP-1結合部位(ITIM1)を変異させたものと、Grb2結合部位(ITIM2)を変異させた物とではBCR刺激後のNF-κBの上昇に違いが認められ、それぞれの部位の機能に差があることを確認し、従来SHP-1との結合のみにて説明されていたCD72のネガティブシグナリングについて新たな知見を得た。またCD72が共受容体としてlipid raftに存在することを認め、それにはCD72の脂質修飾が重要であることを別の変異体の解析から明らかにした(2002年免疫学会発表、投稿準備中)。さらにその機能を解析するために、CD72欠損マウスの脾細胞をレトロウイルスにより不死化し、細胞株を樹立した(2002年分子生物学会発表)。この細胞を使って次年度CD72の解析をさらに進める予定である。
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