研究概要 |
1.胸腺においてPerivascular spaceが果たす役割について検討しPVSは髄質、皮質髄質境界領域の太い血管周囲にのみ存在し、PVSを仕切る二重の基底膜にはともにI, IV型Collagen, fibronectin, lamininが含まれた。PVSにはT系細胞として、CD117^+血液前駆細胞やCD4^+8^-、CD4^-8^+成熟T細胞は確認されたが、T細胞分化途中段階を示すCD25^+細胞やCD4^+8^+細胞は認められずPVSに存在できる細胞には選択性があることが示された。B6CD45.1マウスの骨髄のCD117^+細胞を放射線非照射RAG2遺伝子欠損マウス静脈移入すると1時間後にはドナー由来細胞がPVS内に認められた。このことから、血液系前駆細胞は血液中から胸腺実質内に入る前にPVSへ移行することが示された。また、放射線非照射RAG2遺伝子欠損マウスへ正常マウス骨髄細胞を移入すると3週間後より胸腺実質内およびPVS内に新たに分化した成熟T細胞が認められ、同時に末梢血中のT細胞の場合も増加することが認められた。これらの結果により、PVSは血液中の血液前駆細胞の胸腺内移入及び実質内で分化した成熟T細胞の末梢への移出の通路となることが示され、PVS細胞が胸腺内外へ移動する細胞の選択にも関与することが示唆された。 2.胸腺発生過程においてマウス胸腺へ移入する前駆細胞は最初胸腺原基間葉細胞層に存在し、c-kitやIL7Rを発現し、胸胎仔器官培養系で分化能の解析より、すでにT系列に運命決定されていることを示した。 3.ポリコーム遺伝子であるMel-14が胸腺内T細胞初期分化段階において細胞の増殖と細胞死の制御働いていること、Hes-1の発現維持を介して胸腺細胞の生存維持に関わっていることを示した。 4.胸腺へのT系前駆細胞の移入はきわめて短時間の間に起こること、移入する細胞数及び細胞の質はきわめて限定されていることが明らかとなった。
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