研究概要 |
我々が同定・クローニングしたBILL一カドヘリンは、免疫担当B細胞と小腸上皮に分化時期特異的に発現する。この分子の機能を、遺伝子欠損マウスを作製して検討したところ、本年度は以下の結果を得た。 (1)BILL-カドヘリン遺伝子欠損マウスの粘膜免疫機能の解析;BILL-カドヘリン欠損マウスでは腹腔B1細胞の数が有意に低下しており、同時にT細胞非依存性抗原に対する応答も低下していた。また野生型マウスの腹腔B1細胞にはBILL-カドヘリンが高発現していること、およびT細胞非依存性免疫応答の場である脾臓辺縁帯にB1細胞が局在することなどから、B1細胞の発生分化にBILL-カドヘリンが関与していることが強く示唆された。また、小腸粘膜固有層のIgA陽性B細胞の局在性もBILL-カドヘリンの有無で異なっていたことから、腹腔・腸管におけるB(B1)リンパ球の動態制御にBILL-カドヘリンが関与している可能性が高い。 (2)細菌・ウイルスの感染機構におけるBILL-カドヘリンの関与;Salmonella, Listeria, Yersinia菌およびPrionの経口投与に対する感受性を野生型とBILL-カドヘリン欠損マウスで比較した結果、BILL-カドヘリン欠損マウスでは、Salmonellaに対する感受性がやや低下していた。現在その分子機序について検討している。 (3)骨髄プロB細胞に発現するBILL-カドヘリンと代替軽鎖分子との機能連関;BILL-カドヘリンと代替軽鎖分子の相互作用を検討するためにBILL-カドヘリンと代替軽鎖構成因子(λ5)のダブル・ノックアウトマウスを作成した。現在その形質について解析中である。
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