研究概要 |
1.感作性予知試験法の標準化 本試験法の汎用性を図るには、試験物質の溶媒の選択が重要になるので、脂溶性の場合の溶媒の検討を行った。原則として、アセトン:オリーブ油=4:1を用いること、アセトンに不溶性の場合、DMSOに置き換えるか、オリーブ油あるいはその懸濁液とすることが、今回の検討物質においては適切であることが分かった。また、感作処置を週4日の2週間行い、そのあと11日間のブランクを設けた後、サイトカイン解析を実施することでも差し支えないことが分かった。なお、本方法は現在特許出願中である。 2.感作物質の気管内直接投与によるアレルギー反応惹起試験の試みとその有用性の検証 経皮塗布による本感作性予知試験法では、感作性の定性的な評価はできるが、実際にアレルギー反応を起こすかどうかについては確認できない。そこで、従来、定量生に欠けていた吸入曝露、鼻腔内投与などに替えて、我々はマウスの気管内に直接試験物質を投与する方法を開発した。卵白アルブミンと感作性化学物質であるTMAにおいて喘息病態の検出に成功しおり、これにより、試験物質を定量的に、確実に、容易にマウスの肺内に投与することが可能となった。化学物質においても喘息病態の惹起ができたので、本方法の有用性についても見通しは明るいと思われた。本方法は、現在特許出願中である。 3.TMA感作マウスにおける肺の病態解析 前項のマウス気管内直接投与法によりTMA感作マウスを作成し,肺組織の病理組織学的検索と接着分子(VCAM-1,ICAM-1)の免疫組織化学的解析を行なった。TMAの気管内直接投与により、好酸球、リンパ球を中心とする細胞浸潤と気管支上皮細胞の粘液亢進像を認め、気管支血管内皮細胞にVCAM-1およびICAM-1を著明に検出した。これらの結果は、TMA喘息マウスの惹起と維持にVCAM-1,ICAM-1が重要な役割を担っていることが示唆された。
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