産業化学物質の感作性予知評価の必要性から、我々はマウスを用いた簡便な感作性評価試験の開発と低分子化学物質による喘息病態の解析に必要な喘息モデルの作成ならびにその解析を進めてきた。その結果、以下の成果が得られた。 1.呼吸器感作性を評価するためには、簡便な経皮的感作曝露されたマウスにおいては、サイトカインの産生パターンがその指標として有用であり、さらには、呼吸器感作性と皮膚感作性を区別しうる可能性が示された。指標となりうるサイトカインは、IL-4とIFN-γであり、それらの比率によりTh1/Th2のいずれが優勢かを評価でき、呼吸器および皮膚感作性を区別することができた。 2.試験物質の経気道的曝露の場合、血清総IgE抗体が感作性の有無の指標になりうることが示唆された。 3.呼吸器感作物質の感作曝露法は本来経気道が妥当であることから、簡便でかつ定量性の高い、マウスの気管内直接投与方法を開発し、低分子化学物質による呼吸器アレルギーを惹起することに成功した。これにより、可溶性蛋白抗原から低分子化学物質までを定量的に投与できることから、感作濃度および誘発濃度をもとに、容易にそれらの感作性の強度を比較することが可能となった。 4.サイトカイン産生パターンを指標とする感作性評価試験法で、感作性の有無を確認後、次のステップとして実際に喘息反応を惹起しうるかどうかの評価法として本気管内直接投与法を用いた感作反応惹起試験が可能となり、さらには既知の感作性化学物質(TDI、TMA)による喘息モデルを作ることに成功し、これらの物質によるアレルギー病態を解析することを可能にした。
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