研究概要 |
3年間の調査により,市中の一般健常人鼻腔からのメチシリン耐性ブドウ球菌(MRSAおよびMRC-NS)検出率は20〜30%であることが明らかとなった.調査の過程で,小学生以下の小児と医療従事者からの検出率が特に高かったことから,今年度は病院と調剤薬局に勤務する薬剤師の保菌率について調査を行った. 1.薬剤師ボランティア230名中,174名(75.7%)からメチシリン耐性ブドウ球菌が検出され,うち13名(5.7%)はMRSA,161名は表皮ブドウ球菌をはじめとするMRC-NSを保菌していた.耐性菌検出率は,調剤経験のある薬剤師194名では84.0%であったのに対し,調剤経験のない薬剤師31名では22.6%と,医療従事者以外の人と同程度の保菌率であった. 2.薬剤師から分離した耐性菌株について,各種抗生物質のMIC測定を行った結果,MRSA,MRC-NSともにマクロライド系,キノロン系薬剤とホスホマイシンに耐性の株が多く,またオキサシリンのMICは64μg/mL以上の高度耐性が34.3%を占めた. 3.アンケートより,耐性菌を保菌している薬剤師の抗生物質(散剤・顆粒)調剤数平均は,3ヶ月間で532.7であったが,非保菌者では238.2であり,リスク比からも抗生物質(散剤・顆粒)の調剤を行うことが耐性菌保菌の原因のひとつになっている可能性が考えられた.なお,調査した薬剤師で,調剤時にマスクを着用しているケースは6%であり,集塵装置設置率は約40%であった. 以上の結果から,今後薬剤師の調剤環境に関する調査等を行うとともに,個々の耐性菌株の遺伝子解析等も行う必要があると考える.
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