研究概要 |
現在,今回のテーマに沿っていくつかの解析・検討を進行中であるが,材料としては我々の樹立してきたヒト骨髄腫細胞株15株を使用している。単一施設での10株以上の樹立と保有は国際的にも稀有であり,また骨髄腫の細胞生物学的にも多彩な株を準備することが出来ているので,有用に使用可能と考えられる。 計画調書の「計画,・方法」欄に,骨髄腫細胞に対する種々の薬剤の効果とそれに関連する因子の抽出ということで,抗HER2抗体・Thalidomide・ATRA(all-trans retinoic acid)・bis-phosphonate剤等について,検討を深めてきている。抗HER2抗体では,増殖抑制が認められ,cyclin-dependent kinase-inhibitorsの発現亢進や血管新生因子の減弱などが認められた。また,Thalidomideでは,奇異的に増殖促進の認められる細胞株があり,どうもIL-6受容体の発現との関連が認められるようである。また,ATRAの効果発現には,IL-10が重要であり,IL-10の発現/産生亢進株では,ATRAの効果が打ち消される,即ちIL-10の骨髄腫細胞に対する増殖促進効果が,ATRAの増殖抑制効果に打ち勝つ結果が郷得られた。 今後は,インターフェロンαとγの検討に,加えて,遺伝子発現の面から,骨髄由来株とbody-cavity由来株との間で発現の異なっているいくつかの遺伝子/分子の骨髄腫細胞における細胞生物学的役割の検討を行うとともに,細胞のシグナル伝達系の生理的抑制分子の意義付けも含めて解析する予定である。
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