研究概要 |
2,3,7,8-TCDD(TcDD)はAhレセプター(AhR)を介して肝のUDP-glucronosyltransferase(UGT1)を誘導し、グルクロン酸抱合によりサイロキシン(T4)の排泄促進によりT4の低下を引き起こすこと、一方、PCB77(3,3',4,4'-tetraCB)は、その水酸化代謝物がT4輸送タンパクであるTTR(トランスサイレチン)との競争的結合によりT4低下に関与していることをAhRノックアウトマウス、TTRノックアウトマウスを用いて明らかにしてきた。今年度は、TTRノックアウトマウスを用いてPCB126<3,3',4,4',5-pentaCB)、PCB153(2,2',4,4',5,5'-hexaCB)のT4低下作用のメカニズムを検討した。13週齢のTTR(+/+)マウスとTTR(-/-)マウスにPCB126 1.0mg/kg、PCB153 200mg/kgを経口投与し、7日後に血清と肝臓を採取した。血清中トータルT4(TT4)は、TTR(+/+)、TTR(-/-)マウスのいずれにおいても対照に比べ減少した。PCB126投与では肝臓のCYP1A1、CYP1A2、UGT1A6 mRNAの誘導が見られたが、PCB153投与群ではこれらAhR応答遺伝子の誘導が見られなかった。PCB126による血清T4の低下はAhRを介した作用であり、PCB153よる血清T4の低下はAhR、TTR以外の、メカニズムの関与が示唆された。
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