研究課題/領域番号 |
14570317
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研究機関 | 独立行政法人産業医学総合研究所 |
研究代表者 |
王 瑞生 独立行政法人産業医学総合研究所, 健康障害予防研究部, 主任研究官 (10321895)
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研究分担者 |
須田 恵 独立行政法人産業医学総合研究所, 健康障害予防研究部, 研究員 (90415969)
本間 健資 独立行政法人産業医学総合研究所, 健康障害予防研究部, 部長 (90332402)
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キーワード | 国際研究者交流 / グリコール誘導体 / セロソルブ / 有機溶剤 / 毒性 / 健康影響 / 遺伝子多型 |
研究概要 |
グリコール誘導体の一つであるエチレングリコールモノエチルエーテル(EGEE、別名セロソルブ)は、水溶性と脂溶性の両方の性質を有する有機溶剤として、産業現場などで広く使われている。本研究ではEGEE取り扱い工場の現場調査と曝露者の生体試料(血液、尿)の分析を行って、EGEEによる種々の障害の発生状況、障害とEGEE曝露濃度との関係(量-反応関係)、アルデヒド脱水素酵素であるALDH2の遺伝子多型によるこの有機溶媒の体内における代謝や健康障害の個人差などを明らかにするのが目的である。 本年度は北京市郊外にあるEGEE使用の2工場においてEGEEの使用状況、従業員の曝露状況と健康状態を調査した。作業場のEGEE環境濃度の測定を行い、同時に従業員に有機ガスモニターをつけて、作業時間内の個人曝露の程度を測った。その結果、作業場の空気中EGEE濃度は0から数10ppmであった。また、手袋の着用がなく、皮ふ経由で体内にこの溶剤が吸収される可能性が大きい。 この有機溶剤の曝露者および同じ工場内の非暴露者(対照者)に対して、一般健康検査を行った。粘膜刺激や頭痛、腹痛などの訴えが曝露者に多かった。血液検査の結果、赤血球数、ヘモグロビン量、ヘマトクリットおよび白血球数のいずれも曝露者において減少傾向が見られた。血小板数は有意な変動がなかった。肝機能に対しては、EGEE曝露による影響が認められなかった。 尿中EGEEの最終代謝物質であるエトキシ酢酸(EAA)の測定を行った。非曝露者の試料から微量しか検出されなかったが、曝露者では、数十倍の量が検出され、この有機溶剤への曝露が確認された。現在、EGEEの代謝過程で重要な役割を果たしているALDH2酵素の遺伝子多型の同定が行われている。これによって、ALDH2遺伝子多型によるEGEEの体内における代謝率や健康障害への影響が判明することができる。
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