研究課題/領域番号 |
14570317
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研究機関 | 独立行政法人産業医学総合研究所 |
研究代表者 |
王 瑞生 独立行政法人産業医学総合研究所, 有害性評価研究部, 主任研究官 (10321895)
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研究分担者 |
本間 健資 独立行政法人産業医学総合研究所, 企画調整部, 部長 (90332402)
須田 恵 独立行政法人産業医学総合研究所, 健康障害予防研究部, 研究員 (90415969)
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キーワード | 国際研究者交流 / グリコール誘導体 / セロソルブ / 有機溶剤 / 毒性 / 健康影響 / 遺伝子多型 |
研究概要 |
エチレングリコールモノエチルエーテル(EGEE、別名2-エトキシエタノール、またはセロソルブ)はグリコール誘導体の一種である。体内でエトキシアセトアルデヒドに変換され、さらにALDH2に代表される酵素によってエトキシ酢酸に代謝され、体外へ排泄される。 今年度はこの溶剤を使用している印刷材製造工場で働いている従業員の健康障害とALDH2遺伝子多型の関係について検討した。血液からDNAを抽出し、PCR-RFLP(PCR-制限断片長多型)法を用いて、ALDH2遺伝子多型の解析を行った。19名の男性EGEE曝露者の中、3名が一つのALDH2変異アレルを持っており、他の16名がいずれのアレルも野生型であった。個人曝露濃度が違うものの、変異型群3名のすべての尿中から、未代謝のEGEEが検出された。野生型群においては約半分の対象者尿試料から未代謝のEGEEが検出されたが、残りの半分は検出されなかった。変異型群3名の精子数はいずれも正常範囲内にあり、野生型群の9名中、6名が低値を示した。精子の前進運動率や正常形態率も変異型群の方が高値であった。血中テストステロン、LH、FSHなどの性ホルモン濃度は両者の間に有意な差が認められなかった。これらの結果はALDH2遺伝子多型がEGEE曝露による健康障害に影響を与える可能性を示唆しており、ALDH2変異アレルを持つヒトではEGEEの代謝が遅く、精子障害が出にくい傾向が認められた。 また、EGEE曝露と女性従業員の健康との関連についても検討した。赤血球数やヘモグロビン濃度の平均値はEGEE曝露群と対象群のいずれにおいても正常範囲内であったが、32名の曝露者中、2名が低値を示した。生理不順や頭痛などの非特異的愁訴は両群の間で差が認められなかった。女性従業員においては、比較的高濃度のEGEE曝露にもかかわらず、この曝露に起因する健康障害が顕著に認められなかった。 これらの結果はEGEEによる健康影響の発生機序の解明および予防に重要である。
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