研究課題/領域番号 |
14570317
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
衛生学
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研究機関 | 独立行政法人産業医学総合研究所 |
研究代表者 |
王 瑞生 独立行政法人産業医学総合研究所, 有害性評価研究部, 主任研究官 (10321895)
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研究分担者 |
本間 健資 独立行政法人産業医学総合研究所, 企画調整部, 部長 (90332402)
須田 恵 独立行政法人産業医学総合研究所, 健康障害予防研究部, 研究員 (90415969)
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研究期間 (年度) |
2002 – 2004
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キーワード | グリコール誘導体 / セロソルブ / 有機溶剤 / 毒性 / 健康影響 / 遺伝子多型 / 国際研究者交流 |
研究概要 |
グリコール誘導体の一つであるエチレングリコールモノエチルエーテル(EGEE)が体内でアルコール脱水素酵素によって2-エトキシアセトアルデヒドに変換され、さらにアルデヒド脱水素酵素(ALDH)などによってエトキシ酢酸(EAA)に代謝される。一方、アルデヒドの代謝に主な役割を果たしているALDH2は遺伝子多型を有し、モンゴロイドの3〜5割は活性をほとんど示さない変異型アレルを持っている。本研究ではEGEE取り扱い工場の現場調査と曝露者の生体試料を分析して、EGEEによる種々の障害の発生状況、ALDH2の遺伝子多型による代謝や健康障害の個人差などを明らかにするのが目的である。 尿中EGEEの最終代謝物質であるEAAは対照群の非曝露者の試料から微量しか検出されなかったが、曝露者では数十倍の量が検出された。曝露群従業員の平均精子濃度は対照群より著しく低かった。また、精子の活力の指標である前進運動率もEGEE曝露群においても有意に低下した。正常の形態を有している精子の割合は両群の間に有意な差が認められなかったが、EGEE曝露群において減少傾向があった。これらの結果はEGEE曝露が体内の精子生成に障害を与え、男性の生殖機能に影響を与える可能性を示唆した。 EGEEの代謝や健康障害とALDH2遺伝子多型との関係について検討した。個人曝露濃度が違うものの、一つのALDH2変異アレルを持っている群のすべての尿サンプルから、未代謝のEGEEが検出されたが、両方とも野生型アレル群において検出されたのは約半分であった。変異型群の精子数はいずれも正常範囲内にあり、野生型群に半分以上の対象者が低値を示した。精子の前進運動率や正常形態率も変異型群の方が高値であった。血中テストステロン、LH、FSHなどの性ホルモン濃度は両者の間に有意な差が認められなかった。これらの結果はALDH2遺伝子多型がEGEE曝露による健康障害に影響を与える可能性を示唆しており、ALDH2変異アレルを持つヒトではEGEEの代謝が遅く、精子障害が出にくい傾向が認められた。
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