更年期は女性のライフスタイルにとって大きな転換期であり、更年期障害では、血管運動症状のほか、睡眠障害をはじめとする精神症状も高頻度に出現する。しかし、更年期における睡眠障害の実状や自律神経症状の程度などについて詳細にわたって検討した報告は多くはない。そこで、その実態を明らかにするために勤労中高年女性を対象にしてアンケート調査を行い、さらに、光環境が勤労中高年女性の睡眠・覚醒に及ぼす影響について検討を行った。 平成14年度におけるアンケート調査では、40歳以上の勤労女性に自由記名式のアンケート調査票を郵送し、609通のうち316通の回答を得た。(回収率52.2%)。更年期指数(Kupperman指数)、睡眠障害の程度(ピッツバーグ睡眠質問票)などを項目に含めた。39-44歳、45-49歳、50-54歳、55歳以上の年齢層別に4群にわけ、それぞれの年齢層で、更年期指数の高い群(更年期障害群)と低い群とに分類して検討すると、就床時刻では明らかな差は認められなかったが、起床時刻についてみると、年齢とともに起床が早くなっていた。39-44歳群ならびに45-49歳群では、更年期障害群で睡眠効率が低下していた。50-54歳群は、他の年齢層と比較して、主観的睡眠の質の悪化、入眠潜時の延長、総合評価の低下が認められた。55歳以上の群では更年期障害群において睡眠効率の低下が顕著であった。 ついで、調査参加者のうち、同意の得られた11名(平均年齢52.5±3.9歳)を対象に、夕方に5000ルクス1時間の高照度光照射を行い、光照射が更年期女性の睡眠覚醒に及ぼす影響について検討を行った。睡眠覚醒リズム、直腸温リズムについては有意な変化は認められなかった。睡眠特性については、光照射群で、臥床時間、睡眠期間、総睡眠時間が延長し、さらに睡眠段階3の出現潜時が短縮し、REM睡眠の出現時間が有意に増加していた。また、VAS(Visuai Analogue Scale)を用いた主観的評価について検討したところ、照射群では、夕方の照射群では、対照群と比較して夕方の覚醒度が有意に増加し、身体も軽く感じられていた。また、起床時には楽天的な気持ちが高まり、身体も軽く感じられていた。昼食前の気分もよく、意欲も増加していた。就寝前についてはいずれの項目でも変化は認められなかった。
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