今年度は人間ドック受診者1208人、大腸がんに関連する出血、貧血、通過障害を示唆する症状のない外来患者328例から研究への協力に関する同意を得、全大腸内視鏡検査を行った。 これらのうちそれぞれ1175人と312例から便検体を得、昨年度と合計すると2445例で、うち人間ドックは2133人、外来患者は312例であった。ドック受診者のうち初回受診者は189人(8.9%)と低率だった。 便潜血検査陽性率は免疫法110例(4.5%)、化学法257例(10.5%)で、うち人間ドックではそれぞれ76例(3.6%)と196例(9.2%)であった。大腸がんはドック受診者から合計8例(早期癌7例、進行がん1例)、外来患者から4例(早期癌3例、進行癌1例)が発見された。これらのうち陽性を示したのが免疫法8例(早期癌6例、進行癌2例)、化学法3例(早期癌2例、進行癌1例)で、感度はそれぞれ67%と25%で、早期癌に限定すると60%と20%であった。免疫法の感度は化学法より高かったが統計学的有意差はなかった。 今回の検診で、全大腸内視鏡検査を至適基準としたいわゆる同時法によって免疫法と化学法の感度を比較し、免疫法の感度が高いことが示唆されたが統計学的有意差は得られなかった。この要因は受診者数の確保が予定通りできず、当初の予定の40%程度にすぎないことであった。また繰り返し受診者が87%と大半で、これらの受診者の大半が1-2年ごとに検査を受けており、ポリペクトミーの効果でがんのリスクが低下していたと推定され、実際、研究計画時に仮定した0.45%よりやや低かった(0.38%)が有病率が低いことは主な要因ではなかった。しかし、このことから、感度の差を明らかにするにはさらに研究を持続し、予定のサンプル数以上の受診者に行う必要があると考えられた。
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