この研究の目的は、母親の子育てに対して具体的な支援を試みている助産師、保健師、児童精神科医、臨床心理士を含む乳幼児精神保健の専門家にとって有用な基本的な情報を提供することにある。我々は、妊娠した女性という研究対象を北日本のある市の総合病院で募集した。我々は、この対象に妊娠後期、産後1ヶ月、4ヶ月、1年において、縦断的な精神保健調査を実施した。さらに、我々はこの対象について、母子相互作用と情緒応答性を評価するためのビデオ録画を含む家庭訪問調査を産後4ヶ月と1年に施行した。家庭訪問調査の対象は、63名の母親とその子どもであった。家庭訪問調査においては、母子の分離と再会の場面をAinsworthのStrange Situation法を参考にして構造化した。ビデオの録画された母子の行動の評価は、修正版Emotional Availability Scaleを用いて9入の乳幼児精神保健の専門家によって行われた。Enmotional Availability Scaleの原版は、Biringenらによってかいはつされたものである。我々は、このスケールを我々の研究に合うように修正した。 うつ持続群と非うつ持続群の間で、母子相互作用と情緒的応答性を比較した。うつ持続群の母親は、産後1ヶ月と4ヶ月の両方で抑うつ的であると判断されている。結果として、うつ持続群の母親の感情表現の質は、非うつ持続群に比べて有意に否定的で沈んでいた。うつ持続群の母親の子どもとへの話しかけは有意に少なく、やりとりは有意にスムーズでなかった。また、うつ持続群の子どもの母親への感情表現の質は、非うつ持続群に比べて有意に否定的で沈んでいた。また、うつ持続群の子どもは有意に反り返りが多かった。これらの結果から、うつが持続している母親は、自分の子どもとの相互作用や自分の子どもに対する情緒応答性の点で問題を抱えていることが示唆された。
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