長期の不動状態(20日間のベッドレスト)を健常な若年男性に負荷することにより興味ある骨代謝の生ずることを見出した。即ち安静臥床により著しく骨量が減少することが従来から知られてきたが、この減少には2型の存在する可能性が明らかにしたことである。骨代謝マーカーの2型の発現様式、被加重骨をpQCTで分析して皮質骨・海面骨の骨量減少様式に2型の存在すること、更にマーカーと骨量変化は統一的に説明できることなどを見出したのである。従来ベッドレスト及びスペースフライトでのヒト実験での問題点は、個人間にばらつきが大きく、人体実験であるためその実験の厳格性が一定していないとの疑問点が常に言われてきた。我々はこの実験を数回にわたり行うことで習熟したこととに加え、国立健康・栄養研究所の研究官による厳格な栄養管理により精度の高い結果を売ることが可能となった。その分析成果から、その個人差は遺伝子で規定されている可能性を示唆する結果を得た。即ち不動性骨量減少には、破骨細胞及び骨芽細胞の活性化による高代謝回転型骨減少と、骨表面でなく骨細胞そのものの活性化による骨細胞性骨鰍少の2型が存在することを見出したのである。その結果、先行研究及び我々の過去の成果は、全てこの2型で説明できることが示された。即ち有人実験でのデータの不統一性を明確に理論付ける成果を得たのである。更にかつては骨細胞性骨量減少機構の存在が想定されていたのが、現在では存在しないとのコンセンサスが得られている。しかし我々の系ではその存在を考えざるを得ない成果であり、骨代謝学でも新しい知見を得たと思われる。この視点から、それを規定する因子は何であるかを更に詳しくデータ分析を行うことで解析を進める予定である。
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