研究概要 |
(研究目的) 本邦でも食生活・ライフスタイルの欧米化に伴い、生活習慣病患者が急増しており、その基盤となる肥満やマルチプルリスクファクター症候群が注目されている。肥満は遺伝と環境の双方の影響を受けるが、市町村における生活習慣病予防の為のダイエット教室では遺伝的背景を含めた検討は少ない。また、従来の一方的な講義形式のダイエット教室ではやる気のある肥満者には有効であるが、やる気のない肥満には減量効果が少なく、リバウンドしやすいことはよく経験する。そこで、本年度は行動科学を取り入れた参加型の「楽しくてためになるダイエット教室」を企画し、減量効果に及ぼす影響について分子疫学的に検討した。 (対象と方法) 全国7地区の市町村や医療機関において行動科学的手法を取り入れた「生活習慣予防の為のダイエット教室」を企画し、対象者を231名(男性39名,女性192名)を選定した。ダイエット教室のプログラムは参加型で1)アイスブレイクと自己紹介、2)体験学習による気づきと講義、3)具体的行動目標の設定、4)セルフモニタリング、5)オペラント強化法の順に行った。ダイエット教室終了3ヶ月後に、各種指標(体重、体脂肪率、摂取カロリー、食事のムラ度、空腹時血糖値、HbAlc値等)、食生活と運動の行動変容ステージ分類と具体的な行動変容項目について調査した。尚、同意の得られた者の血液からDNAを抽出し、肥満関連遺伝子多型(β_3-アドレナリン受容体のTrp64Arg変異など)の解析はLightCyclerを用いて行った。 (結果と考察) 行動科学的に介入することで有意な減量効果(平均4.7kg)が得られた。熱産生と脂肪分解に関わるβ_3-アドレナリン受容体のTrp64Arg変異を持つ肥満者は、持たない肥満者に比べて、減量効果が有意に少なかった。以上の成績から、肥満者に行動科学的に介入することで、減量効果は有意に高まるが個人差がみられ、それには一部肥満関連遺伝子多型が関与していることが明らかにされた。
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