(研究目的) 本邦でも食生活やライフスタイルの欧米化に伴い、糖尿病をはじめとする生活習慣病が急増しており、その基盤となる肥満やマルチプルリスクファクター症候群が注目されている。肥満は遺伝と環境の双方の影響を受けるが、市町村や職場の生活習慣病予防のためのダイエット教室において遺伝的背景を含めた検討は少ない。また、従来の一方的な講義形式のダイエット教室ではやる気のある肥満者には有効であるが、やる気のない肥満者には減量効果が少なく、リバウンドしやすいことはよく経験する。そこで、本年度は、行動科学を取り入れた参加型の「楽しいダイエット教室」を企画し、減量効果と肥満関連指標に及ぼす影響について検討した。次に、子どもに与える両親の影響についてSib-Pair解析を用いて肥満と肥満関連指標について両親の影響を検討した。 (対象と方法) マルチプリリスウファクター症候群を伴った肥満男性52名に対し、2日間の肥満介入を行なったところ、有意な体重減少がみられ、その1年後にも減量体重は1kgとわずかながら維持されていた。それに伴い、収縮期血圧(-12mmHg)、拡張期血圧(-5mmHg)、総コレステロール(-15mg/dl)、中性脂肪値(-74mg/dl)、空腹時血糖値(-19mg/dl)、GPT値(-91U/l)、γ-GTP値(-20IU/l)の有意な低下を認めた。また、17組の家族についてBMI、血清脂質、空腹時血糖値、HbA1c、肝機能について両親との間の相関について検討した。 (結果と考察) マルチプルリスクファクター症候群を伴った肥満男性では、わずかな体重減少でも肥満関連指標の大幅な改善がみられた。子どもと両親との関係では、BMIと総コレステロール値は父親よりも母親との正の相関係数が有意に高かった。空腹時血糖値は両親との有意な正相関がみられた。
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