研究概要 |
1.北東アジアでは、肥満と代謝症候群が急増していた。 日本、モンゴル、韓国の壮年期労働者を対象に、肥満、代謝症候群および生活習慣のフィールド調査を行い、急速な市場経済と産業化に起因する食習慣の変化、運動不足、ストレスによって肥満や代謝症候群が急増していることを明らかにした(日農医誌,Int J Obese, J Occup Health)。 2.北東アジアの肥満と代謝症候群の病態は、民族により大きく異なっている。 WHO西太平洋事務局の肥満基準で「肥満」と判定されるBMI25.0以上の割合は、日本人が最も少なく、韓国人、モンゴル人の順に増加した。しかし、最も肥満者が少ない日本人の代謝症候群有病者率は、他国より肥満者割合ほど低くない。モンゴル人は、顕著な肥満を示したが、血中脂質や糖質の異常は少なかった(Int J Obese)。このことは、アジア人の代謝症候群は、BMIなどの体格指標だけでは予知できないことを示唆しており、BMIに血清中性脂肪を加えた評価が重要であることを明らかにした(Lancet)。 3.北東アジアの代謝症候群に、食習慣が関連している。 日本で肥満者への教育介入試験を行い、β3アドレナリン受容体遺伝子変異群は野生群に比較して、身体運動量の増加や熱量摂取量の減少への反応性が低いことが明らかになった。しかし、肥満や代謝症候群には、これらの遺伝子多型よりも生活習慣の影響が大きいことを明らかにした(Int J Obese)。日本、モンゴル、韓国での疫学調査によって、炭水化物摂取量は韓国>日本>モンゴル、魚摂取は日本>韓国>モンゴルの順であり、代謝症候群の病態にこれらの食習慣因子が関連していることを明らかにした。これらの作用は各国で異なり、日本人の高中性脂肪血症には、魚由来の多価不飽和脂肪酸は低下傾向を示さないが、炭水化物摂取から中性脂肪合成の指標であるオレイン酸/ステアリン酸比と正相関することを明らかにした(J Lipid Res)。
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