研究概要 |
1.1983年に福岡県久山町で行われた成人健診を受診した満40歳以上の住民は2,551名であり,受診率は81%であった。健診期間中に死亡した3名と脳卒中既発症者75名を除く2,473名を脳卒中発症の追跡対象集団とした。この集団を1983年11月から13年間の追跡し,脳梗塞発症者140名(男性65名,女性75名)を同定した。年齢調整した脳梗塞発症率は1,000人年当たり,男性4.4人,女性3.2人であった。病型別に見ると,ラクナ梗塞69名(男性25名,女性44名),アテローム血栓性脳梗塞36名(男性20名,女性16名),心原性脳塞栓症35名(男性20名,女性15名)であった。 2.血清脂質と脳梗塞発症との関連を検討すると,男女とも総コレステロール,HDLコレステロール,LDLコレステロール,中性脂肪は全脳梗塞の有意な危険因子とならなかった。しかし,病型別に検討すると,男女ともLDLコレステロールがアテローム血栓性脳梗塞の有意な危険因子となった。 3.同様に,心筋梗塞既発症者を除く2,523名を虚血性心疾患発症の追跡対象集団とした。急性心筋梗塞および1時間以内の心臓突然死を虚血性心疾患と定義した。この集団を1983年11月から13年間の追跡し,虚血性心疾患発症者73名(男性39名,女性34名)を同定した。年齢調整した虚血性心疾患発症率は1,000人年当たり,男性3.4人,女性2.1人であった。 4.血清脂質と虚血性心疾患発症との関連を検討すると,男性のHDLコレステロール低値と,女性の中性脂肪高値が虚血性心疾患の有意な危険因子となった。
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