本年度は、前年度の後半から大阪市内のホワイト・カラー従業員を対象に実施した調査結果をコンピュータに入力のうえ、データベースを作成し、信号検出分析法(Signal Detection Analysis)(SDA)を用いて解析した。本研究の目的はソーシャル・サポートの労働ストレス緩和効果を"Sensitivity hypothesis"の立場から検証することである。具体的には、対象集団の全体規模でストレスの緩和効果が発生するのではなく、特定のストレッサーにマッチした特定のソーシャル・サポート要因を持った者の間でのみストレスの緩和効果が発生すると考えられる。また、Sensitivity hypothesisによれば、理論的には、ストレッサーとソーシャル・サポートの組み合わせ如何によって、ストレスの緩和効果のみならず、ストレッサーの影響を増悪させることもありうる。 そこで、SDAを解析方法として用い、ホワイト・カラー労働者を対象に、可能な限り数多くのストレッサー、ストレス反応、ソーシャル・サポートの組み合わせを取り上げ、ソーシャル・サポートの労働ストレス緩和効果を検討した。 その結果、以下の点が明らかになった。(1)ソーシャル・サポート要因とストレッサーのミスマッチはストレス緩和効果を生じない。(2)ある種のソーシャル・サポートはストレスの影響を、緩和とは逆に、増悪させる。(3)同一のソーシャル・サポートがストレッサーや他の要因の組み合わせ次第で緩和と増悪効果の両面性を有する。 本研究によって得られた知見は、従来のソーシャル・サポートを肯定的に捉えるスタンスとは異なり、知見自体が非常に有益であると思われる。また、本知見は学術的価値のみならず、ストレス・リダクションの介入や健康教育等の実際上の価値が大きいと思われる。
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