研究概要 |
Human T-cell lymphotropic virus type I(HTLV-I)感染とがん罹患率との関連を明らかにするために、前向きコホート研究を実施した(長崎大学医学部倫理委員会承認番号13072623)・対象者は、1985.1-1996.8に長崎県K病院外来を受診した40-69歳(1993.1.1時点)の男女,4,297人であった(HTLV-I抗体陽性割合24.7%)・追跡期間中(1993.1-1999.12または2000.12)に、290人の死亡(ATL10人を含む)および261人の悪性腫瘍の罹患(ATL6人を含む)が認められた.性、年齢、輸血歴、飲酒、喫煙習慣その他の共変量を補正すると、,HTLV-I抗体陽性はATLを除く全死因死亡率(RR=1.3,95% CI 1.0-1.7)、非腫瘍性疾患死亡率(RR=1.6,95% CI 1.1-2.3)と関連していた.HTLV-I感染はATLを除く全悪性腫瘍(RR 0.97,95% CI 0.73-1.3)、大腸がん、肝臓がん、肺がんのリスクとは関連しておらず、一方、胃がんのリスク低下(RR=0.42,95% CI 0.18-0.99)と有意に関連していた.結論として、HTLV-I、感染はATLを除く全死因死亡率、非腫瘍性疾患死亡率と関連していると考えられた.これまでの後ろ向き患者対照研究、HTLV-Iトランスジェニックマウス、ラットにおける観察結果と異なり、HTLV-I感染はATL以外の発がんリスク上昇とは関連していないと思われた.胃がんのリスク低下のメカニズムについては、HTLV-IとHelicobacter pyloriとの負の交互作用(胃粘膜における炎症反応の減弱)が考えられた.なお、この研究はHTLV-Iと一般のがんリスクとの関連についての最初の前向きコホート研究である.
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