研究概要 |
1.輸血後C型肝炎患者114人(ウイルス感染後の期間30年以上)について、Interleukin(IL)-10遺伝子プロモーターの3つの多型(転写開始点からのposition -1082、-819、-592)、(GCC、ACC、ATAの3つのハプロタイプ)について解析し、肝線維化の程度との関連について検討した.GCCハプロタイプの頻度は、それ以外(ACC、ATA)に比べて肝線維化高度群で有意に低く、ウイルス遺伝子型、HCV-RNA titerなどの他の共変量の影響を調整しても、関連は有意のままであった(オッズ比0.1,95%信頼区間0.01-0.9)(Journal of Hepatology 39,457-458,2003). 2.C型肝炎ウイルスによる肝がん患者104人について、Des-gamma-carboxy prothrombin(DCP)をモノクローナル抗体MU-3、19B7によって測定し、予後との関連を検討した.DCP陰性群(DCP<40 mAU/ml)、低DCP指数群(DCP>=40 mAU/ml、MU3/19B7<3.0)、高DCP指数群(DCP>=40 mAU/ml、MU3/19B7>=3.0)に分類すると、高DCP指数群の生存率は、DCP陰性群、低DCP指数群に比較して有意に低く、高DCP指数に伴うハザード比は12.3であった(Cancer 98,2671-2677,2003). 3.Human T-cell lymphotropic virus type I(HTLV-I)とがん罹患率との関連を明らかにするために前向きコホート研究を実施した(長崎大学医学部倫理委員会承認).対象者は、1985.1-1996.8に長崎県K病院を受診した40-69歳(1993.1.1時点)の男女4,297人であった(HTLV-I抗体陽性割合24.7%).追跡期間中(1993.1-1999.12)に261人の悪性腫瘍の罹患(ATL6人を含む)が認められた.HTLV-I感染はATLを除く全悪性腫瘍(RR 0.97,95% CI 0.73-1.3)、大腸がん、肝臓がん、肺がんのリスクとは関連しておらず、一方、胃がんのリスク低下(RR=0.42,95% CI 0.18-0.99)と有意に関連していた.これまでの後ろ向き患者対照研究、HTLV-Iトランスジェニック動物における観察結果と異なり、HTLV-I感染はATL以外の全般的な発がんリスク上昇とは関連していないと考えられた.胃がんリスク低下のメカニズムについては、HTLV-IとHelicobacter pyloriとの負の交互作用(胃粘膜における炎症反応の減弱)が考えられた.なお、この研究はHTLV-IとATL以外のがんリスクとの関連についての最初の前向きコホート研究である(Cancer Causes and Control 14,889-896,2003). 4.現在、上記3の結果の普遍性を検討するため、長崎の放射線影響研究所コホート(Adult Health Study Cohort)において、HTLV-Iとがん罹患との関連を調査している.
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