研究概要 |
ここ数年来、アウトカム指標としての患者の健康関連QOL測定におけるリスポンスシフトの問題が着目されている。リスポンスシフトとは、経時的な測定の際に個人の持つ基準、価値観、概念の変化の結果として引き起こされる自己評価の意味づけの変化が生じるというものである。1997年にAllinsonらが指摘し、Schwartsら(1999年)が構成概念の変化も生じる可能性があることを指摘して、QOL測定において問題になった。 そこで本研究では、QOL測定において、経時的データを分析する際にリスポンスシフトがQOL測定における尺度構成に及ぼす影響について、がん患者200名を対象とした治療効果の臨床試験での3時点以上での測定結果に基づいて、実証的に検討し、リスポンスシフトの形態を明らかにし、それに影響を及ぼす要因を解明することを目的とした。 対象は首都圏某医療センターの肺がん入院患者200名とし、アウトカム指標として、HRQOL20(Yamaoka et al.,1994)およびEORTC QLQ C30を用いた。調整要因として患者の状態(患者の活動の状態を評価するPerformance Score ; PS,医師が評価)、性格特性(全25問で構成されるEPQ簡略版調査票;Eysenck, HJ, 1987, Shigehisa, et al.,1987)を用いた。研究デザインは治療前後のQOLの経時的変化を捉える介入研究とし、本年度はがん患者の登録とベースライン調査を行った、すなわち、これまでに収集した172名の患者のベースライン時点でのアウトカム指標と要因との関連について分析を行った。ベースライン時点ではこれまでと同様に数量化III類による構造分析の結果では一次元構造をなしており、これはEORTCでもほぼ同様であることがわかった。さらにEORTCによりHRQOL20の同時的妥当性があることがわかった。
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